顧客の生涯価値 第 2 部:消費の予測

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・ブログシリーズ「顧客の生涯価値 第 1 部:生涯価値の予測

顧客の 20% が、利益の 200% を生み出しています。

数学的には不可能な数字ですが、誤植ではありません。ハーバード・ビジネス・スクールのスニール・グプタ教授が著書「Driving Digital Strategy」(デジタル戦略の推進)で指摘している「顧客の大部分は利益を生み出さない」という認識を考慮すれば、説明がつきます。

具体的な比率は企業によって異なりますが、それぞれの企業が価値の高い顧客を特定し、その顧客と長期的な関係を築き、さらにそのような顧客を増やすことは非常に重要です。

企業によっては、不採算の顧客を完全に切り捨てる場合もありますが、そこまでしなくても、最低限、企業は不採算の顧客を特定し、その顧客への追加投資を最小限に抑えることは当然実施するべきです。ベイン・アンド・カンパニー1による、顧客維持率を 5% 高めると収益性が 25~95% 向上するという分析は有名です。この収益性の向上を達成するうえで、適切な顧客を維持するという点が重要なポイントになります。

ある顧客の潜在的な収益性は必ずしも明らかではありません。そのため、長期的で価値の高い関係を築くためには、多額の先行投資が必要になることがほとんどです。顧客が自由に出入りできる非サブスクリプション型のモデルでは、個々の顧客が発するシグナルを、取引の頻度、頻度、金額などの観点から解釈し、将来の収益の可能性を推定できますが、それ以上のことはほとんどできません。

過去の取引件数は同じでも、将来のエンゲージメントや支出に対する期待値が異なる顧客
図 1. 将来的な見込み利益による顧客の分類

顧客生涯価値(CLV)が重要な理由

顧客生涯価値(CLV)は、現代のマーケティングにおいて重要な指標です。メンズファッションを販売している場合2 でも、クラフトスピリッツを販売している場合3 でも、ライドシェアサービスを提供している場合 4 でも、顧客による将来の消費の正味現在価値は、顧客維持のための投資の指針となり、マーケティング全体の効果を測る指標となります。CLV を個人レベルで計算すると、最良の顧客と最悪の顧客を分け、その間の全ての顧客を位置づけるのに役立ちます。

さまざまな顧客の可能性を認識したうえで、それぞれの顧客の好みを理解することは、効果的なパーソナライゼーションの基盤となります。2019 年に実施した小売、旅行、ホスピタリティ業界のシニアマーケター 600 人を対象とした調査5 によると、パーソナライゼーションによって高い ROI を得たとされる企業は、ROI が低かった企業に比べて、2割以上も顧客生涯価値を主要なビジネス目標として捉えていました。このことからも、CLV は顧客中心のエンゲージメントの基礎となるものです。一方で、CLV は正しく計算するのが難しい指標である6 ことも事実です。

顧客生涯価値の予測

最も単純な CLV の計算式は、平均年間収益(または利益)に平均顧客寿命を乗じて、典型的な顧客から得られるであろう利益、もしくは収益の合計を算出するものです。このような単純な平均値に基づいて計算された CLV は、CLV を推進する 2 つの重要な方向性、すなわち、顧客寿命および顧客支出の傾向を把握するのに役立ちます。しかし、この 2 部構成のブログシリーズの第 1 部をお読みになった方(またはピーター・フェーダー氏のプレゼンテーション7をご覧になった方)は、バランスのとれた(正規の)値の分布を仮定した単純平均が、これらの指標の現実を反映していないことをご存知でしょう。つまり、顧客の取引頻度や支出には偏りがあるため、それを平均で考えてしまうと、実際の CLV からかけ離れたものになるということです。

顧客ごとの日次消費合計の頻度:高額消費の右側は長いテールを示している
図 2. 顧客消費の平均値化ではロングテールの高額顧客の特性が無視される

さらに、これらの平均値は、顧客集団全体の一般化した状態を示すだけで、よりパーソナライズされたサービスを提供しようとしている個々の顧客を特徴付けることはできません。 多くの企業は、顧客をセグメント化し、そのセグメントごとに CLV を算出することでこの問題を解決しようとしています。 このようなアプローチは、セグメント内の顧客には有効に働きますが、セグメントを超えた顧客の行動変化を見逃してしまい、顧客から得られるリターン(収益)が低いのか、それとも高いのかという予測が難しいものになってしまします。 

CLV を適切に定式化するには、個々の顧客のエンゲージメントのパターンと、顧客集団全体で観察されるパターンとの比較検討が必要です。 このようなモデルは、1980 年代後半に登場しましたが、数学的に複雑であったため、あまり活用されていませんでした。これらの BYTD(Buy 'til You Die)モデルは、2000 年代半ばに改訂され、数学が大幅に簡略化されたことで、ルネッサンスを迎えました。 しかし、それでも、BTYD モデルは、現場レベルで計算しやすいとは言えません。 この点は、一般的なライブラリを利用することで、これらのモデルの背後にあるロジックを使いつつ、簡単に活用できるようになります。

エンタープライズにおける CLV の導入

前回のブログでご紹介したように、これらのライブラリを使用することで、個別の CLV の適切な計算が非常に容易になります。それでも、克服すべき技術的なハードルがいくつかあります。これらの課題は、データエンジニアリングやデータサイエンスの現場で定評のある、Databricks プラットフォームが提供する機能を使用することでうまく解決できます。(課題については、ブログシリーズの第 1 部とその関連 Notebook を参照してください。)

1 % の月次割引率で計算した個人顧客の 12か月間の CLV
図 3. 1% の月次割引率で計算した個人顧客の 12 か月間の CLV

では、技術的な課題を解決した後、顧客ごとの CLV 計算を日々のプロセスに導入するにはどうしたらよいでしょうか。 まず、CLV は常に定まった値ではないことを認識する必要があります。 製品の革新、お客様のニーズや好みの変化、競争市場の変化などにより、個人のエンゲージメントパターンや推定 CLV が変化することがあります。 そのため、CLV の総計(総計および顧客ベースの規模で正規化したもの)は、顧客資本の変化を評価するために継続的にモニターすべき指標となります。

6 か月間隔で提示される CLV 総額の 5 年後の予測値
図 4. 6 か月間隔で提示される CLV 総額の 5 年後の予測値

さらに、価値の高い顧客と低い顧客を分けるものを理解する必要があります。顧客の特性や行動の差異により、それぞれの顧客が企業サービスをどのように評価しているか捉えることができる可能性があります。そうなると、結果として、収益性を最大化する方策が導き出せます。同様に、高価値の顧客層になる可能が高い、類似の顧客を新たにターゲットにし、顧客獲得戦略を強化できるようになります。

機能や体験への投資は、どの顧客層にどのように響くかという観点からも評価されます。 ロイヤリティプログラム、モバイルアプリケーション、パーソナライズされたサービスなど、顧客関係の寿命を延ばしたり、取引ごとの支出を増やしたりするような投資額の大きいサービスは、継続的な投資が正当化される可能性があります。 CLV の針が動かない場合は、そのようなサービスの変更や中止が必要になるかもしれません。

最後に、私たちは顧客との関わりの中で CLV を最優先させる必要があります。広告、メール、バナーなどで顧客に提供するオファーやプロモーションを決定する際に、CLV を活用することで、顧客との関係に適切な投資を行うことができます。また、顧客満足度の問題に対処する際、CLV は特定の顧客との健全な関係を維持するために必要な範囲を示す場合もあります。

単純な計算結果でのみ関係を管理する必要はありません。しかし、全ての顧客から同じようにリターンを得られるとは限らないことを慎重に考慮し、投資を適切に調整することは可能です。プロセス統合の技術的な障壁は、ほとんど気にする必要はありません。今日では、顧客に価値ある製品やサービスを提供しながら、健全で収益性の高い関係を維持するために、私たちのプラクティスをシフトしていくことが求められています。

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