スーパーアプリ事業大手 Grab(グラブ)は、8 か国 351 都市にまたがる数百万人のユーザーにサービスを提供しています。グラブにとって、データの可視化と関係部門間での共有は、消費者のニーズや嗜好の正確な予測を可能にする鍵となります。グラブでは、アプリのダウンロード数が 1 億 8,700 万を超え、ライドシェア、食料品や日用品の配送、デジタル決済などの取引件数は 60 億を超えます。グラブは、ユーザーを包括的に理解するため、さまざまな製品セグメントや事業部門が利用するデータを集約し、一元化する必要がありました。そうすることで、機能の改善や、ユーザーのニーズや嗜好にあわせたサービスの提供が可能になります。グラブでは、これらの課題を解決すべく、Databricks を活用して Customer 360 を構築しました。その結果、コラボレーション、実験、革新的な機能の開発、顧客中心のエクスペリエンスの継続的な改善が可能になっています。
一貫性のあるデータ共有ができていなかった
グラブでは、データチームによって異なる製品機能をサポートし、それぞれの顧客セグメンテーションに基づいて違う機能を構築していたため、ユーザー理解の一貫性が欠如していました。製品、データサイエンス、分析チームは、ユーザー属性データを共有できない課題がありました。また、マーケティングキャンペーンの ROI を向上させ、さまざまなユーザーのタイプに合った機能を構築するために、ユーザーのニーズを理解する必要性がありました。
異なるチームが複数のシステムを構築しているため、複数のデータパイプラインを管理しなければならず、エンジニアリング工数およびコストの大幅な増大も課題となっていました。
グラブの分析部門責任者ニヒル・ドワラカナート(Nikhil Dwarakanath)氏は次のように述べています。「東南アジアでは、消費者の 6 人に 1 人がグラブを利用しています。私たちは、組織全体でデータを最大限に活用し、深い気づきを得たいと考えていました。それには、膨大な量のデータを体系的で一貫性のある方法で共有可能にすることが必要でした。」
グラブに必要なのは、データの量に関わらず拡張性とコラボレーションを可能にする統合データ分析プラットフォームでした。また、パーソナライズされた顧客エクスペリエンスを提供する機能開発のために、顧客セグメントを一元化し、一貫して把握できるソリューションも必要としていました。
統合データプラットフォームと共同作業を通じて実践的な気づきを得る
グラブは統合プラットフォームに、Databricks のレイクハウスプラットフォームを採択し、「Customer 360」を構築して社内セルフサービス型顧客データソリューションにしました。Customer 360 は、さまざまなビジネスデータチームやテクノロジーデータチームからクラウドソーシングされた何千もの顧客中心の属性の単一ソースとして機能するようになりました。チームはこの民主化された顧客データに、どこからでもセキュアにアクセスでき、顧客の習慣やニーズへの理解を深め、顧客のために強化されたアプリ内エクスペリエンスを作成できます。
「Azure Databricks を利用した Customer 360 により、グラブは顧客データを活用し、地理空間的またはトランザクションの観点だけでなく、さまざまな製品セグメントや機能にわたってお客様の一貫した理解を構築できるようになりました。」(ドワラカナート氏)
グラブは、Delta Lake を通じてデータの整合性とセキュリティをさらに強化した形で、Web サイトやアプリからユーザーが生成した数千ものシグナルやデータソースを取り込み、最適化できるようになりました。数週間かかっていた手間のかかる作業は、数時間に短縮されています。
データをシームレスに統合する Databricks の機能により、豊富な顧客セグメントやより深いプロファイルの構築が可能になりました。また、完全なセルフサービス型社内ポータルは、さまざまなチームが容易にコラボレーションして、顧客データ、洞察、属性、生涯価値を探索することを可能にしています。今ではグラブは、アプリ内エクスペリエンスを向上させ、ユーザーに優れたサービスを提供するために、効率的かつ効果的な適切なレコメンデーションの作成や、ユーザーの嗜好にあわせた新機能の開発ができるようになりました。
豊かな知見で消費者のニーズに応える
Customer 360 の活用で、グラブの社内チームは効果的かつ迅速なコラボレーションが可能になりました。今では、データプラットフォームを活用して顧客を包括的に理解し、レコメンデーションやアプリ内機能をパーソナライズしています。Attribute Discovery(属性発見)プラットフォームとセルフサービス API ポータルによってサポートされているため、新しいユーザー機能を迅速に開発でき、実験コストの削減、アプリへの迅速な移行が可能になっています。
このシステムを活用した本番ユースケースの初期の例としては、顧客が電話をかけてきた際に、エージェントが顧客セグメント情報を利用できるようにしたことが挙げられます。この新機能は、コンタクトセンターチーム向けに、わずか数週間で設計する ことができました。以前は、同時管理が必要な冗長なデータパイプラインになることもあり、専用の開発で時間がかかっていた作業です。