金融サービスのリスク管理に AI を活用する 4 つのメリット

効果的なリスク・コンプライアンス管理について詳しくは、こちらのページをご覧ください。

銀行における中核的な機能は、詐欺、マネーロンダリングなどの金融犯罪から顧客を守ることによる資産の保護、リスクの特定、損失の軽減です。相互に絡まり合ったデジタルな現在の世界において、リスク・コンプライアンスの管理は、これまでになく複雑でコストのかかる取り組みとなっています。2008 年のグローバル金融危機以来、規制の変更は 500% 増加し、プロセスにおける規制のコストは増大しています。金融サービス機関(FSI)では、2020 年に更新されたマネーロンダリング対策(AML)や 2023 年のトレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)、EU における PSD2 のような新たな規制への対応に追われています。規制への対応に加え、データ管理やリスク評価の改善を求める消費者の声もあり、銀行の運用コストは 60% 増加しています。

コンプライアンスの問題は、基本的にはデータの問題です。レポート作成に必要な正解のデータ(ground truth)の欠如、大規模に実行するためのレガシー技術の不足などが原因で、シンプルであるはずのレポート作成が、極めて困難なオペレーションになってしまうことがあります。コンプライアンス違反や SLA 違反による罰金(2019 年に銀行は過去最高の 100 億ドルの AML に関する罰金を支払っています)を考慮すると、データが不完全であっても、レポート作成は進めなくてはなりません。一方、低品質なデータという実績も、「管理不十分」となり「罰金」が課せられます。結果として、多くの FSI はデータの信頼性とデータの鮮度のバランスをとりながら、低品質のデータと厳格な SLA の間で奮闘し続けることになります。

人工知能(AI)の活用により、クラウドベースの技術の活用によるデータ管理の近代化に加え、規制当局が日々直面する運用上の課題、システム上の問題に対応できます。そのため、規制のコンプライアンスにおける AI の重要性が高まっています。AI の技術的なブレークスルーによる潜在的なメリットは数多く存在しますが、現在のレグテックのソリューションでは、規制の変更管理、誤検知の削減、不正や AML の防止、ヒューマンエラーへの対策という少なくとも 4 つの明確なメリットが既に実証されています。このブログ記事では、これらの 4 つのメリットと、進化し続けるコンプライアンスの世界に対応する FSI に AI がもたらす革新について解説します。

1. 規制の変更にも効果的に対応

規制の変更管理をうまく行うためには、金融サービスは、数千の規制ドキュメントの中身を組み合わせる必要があります。規制の変更は、ビジネスの異なる領域間で関係する調整を必要とし、2 次、3 次的な影響が発生します。例えば、資産運用会社が規制の変更に基づいてファンドやポートフォリオの組み替えを行う際、それに含まれるそれぞれのアセットが影響を受け、他のポートフォリオにも調整が必要となります。規制がアップデートされると、一連の連鎖反応が引き起こされます。

また、金融サービスにおけるレポーティングには、無数のドキュメントと繰り返しの作業が含まれています。ここで、コンプライアンスの要件に応えるために、自然言語処理(NLP)とインテリジェントプロセスオートメーション(IPA)が重要となります。さらに、NLP はドキュメントを分析、分類し、クライアント情報、規制の変更の影響を受ける可能性のある商品、プロセスなどの有用な情報を抽出できるので、金融機関とクライアントは、規制の変更に対して最新の状態を保つことが可能となります。規制の変更管理プロセスの自動化は、AI のキーとなるユースケースです。コンプライアンス違反による膨大な罰金など、金融機関が直面する課題は、適切な AI の実装によって解決できます。2020 年、米国証券取引委員会(SEC)だけで 715 件の強制執行を行い、、違反者に総額 46.8 億ドルを超える罰金の支払いを命じました。平均罰金額は 200 万ドルでした。膨大なテキストからパターンを見つけ出す AI の能力により、変化し続ける規制環境に対する理解と、罰金および関連コストを事前回避することが可能になります。

2. 誤検知の低減

金融機関の従来型のルールベースのコンプライアンス警告システムでは、大量の誤検知が発生しています。フォーブス誌は、誤検知率が 90% を超えることもある従来のコンプライアンスプロセスには、何か問題があると指摘しています。大手銀行では、コンプライアンスシステムの誤検知が驚くほど高い割合で発生しています。標準的な規制技術に基づくコンプライアンス警告システムでは、日々数千におよぶ誤検知が発生しています。これらの誤報は、コンプライアンスの担当者による確認が必要であり、非効率性とヒューマンエラーを引き起こす原因になります。

AI や機械学習を活用して重要なデータ要素を取得、抽出、分析することで、コンプライアンス警告システムをより完璧なものに近づけるように効率化でき、誤検知の問題に対応できます。このように、AI 技術は、コンプライアンスに関連するアクティビティを自律的に分類し、重要なアップデート、イベント、アクティビティをアラートすることで、現在のデータドリブンな環境のコンプライアンス業務を効率化し、コストを削減します。これらの技術は、コンプライアンスの担当者が保有するデータから学習するように構築されているので、AI と ML アプリケーションはコンプライアンス警告システムをほぼ完全な状態になるまで整流化します。。AI 技術はコンプライアンス業務を効率化し、現在のデータドリブンなコンプライアンス環境のコストを削減します。

3. 異常検知の大規模な展開による不正防止と AML の強化

不正対策のための AI 導入は既に幅広く行われており、これからも拡大していくでしょう。AI は、トランザクション履歴と、他の構造化、非構造化データと組み合わせてモニタリングし、ATM のハッキング、マネーロンダリング、融資詐欺、サイバー攻撃、金融テロのような不正を示唆する異常を識別します。

データの異常を特定することは、データ理解の重要な課題です。大規模なデータを機械学習ツールや統計手法に使用することで、正常なパターンを学習することができます。一貫性のないイベントが発生すると、異常検知アルゴリズムが異常な行動を分離し、学習されたパターンに対応しないイベントのフラグを立てることができます。コンプライアンスにおいて、数百万のデータポイントを分析するので、FSI はスケーラブルな方法でトランザクション、顧客データを取り込み、情報を処理するための計算能力を必要とします。異常検知アルゴリズムは、企業がさまざまなシナリオにおいて、異常なデータポイントを特定し、対応を支援します。銀行のセキュリティシステムは、不正なトランザクションやコンプライアンスに違反する活動を識別するために異常検知技術を活用しています。

AIや機械学習の別の適用事例は、アラート自体の生成です。従来、これらのアラートは一連のルールに基づいて生成されており、そのほとんどが手作業によるコーディングで、その一部はデータマイニングや統計的手法に依存していました。これらのいくつかは、明確なものであり、単一の入力パラメータや特徴量の値に基づいています。例えば、規制のある国へのトランザクションまたは 1 万ドルを超えるトランザクションは、既存の AML ポリシーの一環として報告、分析する必要があります。しかし、特定のトランザクションでは、その特徴が微妙に組み合わされているため、精査が必要です(典型的な AML スキームは、1 万ドルぎりぎりで電子送金することです)。結局のところ、マネーロンダリングのトランザクションを偽装し、隠ぺいしようという動機が存在するのです。さらに、悪意を持つ者は監視の一歩先をいくために、常に新たな方法を考案しています。仮に、モニタリングシステムが、過去に人々がシステムを騙した方法に基づいているとすると、システムを騙す新たな手法やテクニックに対応することができません。グラフ分析と AI を用いることで、企業は人間の目に見えないパターン、既存のルールセットでは捕捉できない目立たないパターンの発見が可能になり、不正な振る舞いに関する文脈を学習することで、隔離した異常を新たな攻撃の方向性に関連づけることが可能になります。

4. ヒューマンエラーの軽減

ヒューマンエラーにより、規制業界では数十億ドルものコストが毎年発生しています。例えば、2020 年にシティグループのクレジット部門の従業員は事務手続きのミスにより、レブロン社の貸し手に約 10 億ドルを送金しました。効果的ではないプロセス、時代遅れのテクノロジー、不注意など、資産管理におけるヒューマンエラーの原因はさまざまです。金融規制は、コンプライアンス担当者に対して、大手銀行におけるトランザクション、顧客、業務上の活動に関する詳細なデータを追跡、管理、分析することを求めています。この規模の情報は、ヒューマンエラーを引き起こす混乱の可能性をもたらします。規制へのコンプライアンスがテクノロジー主導型になっていく中、AI および機械学習アプリケーションは、ヒューマンエラーのインパクトを軽減するために極めて有用です。

AI や機械学習の技術は、見えない場所、合理的なエラーや人間が気づきにくい視点に光を当てます。さらに、優れた AIおよび機械学習プログラムは、傾向とパターンを明らかにします。

現在のコンプライアンスの問題はデータの問題です。リスクとコンプライアンスに対するモダンなアプローチには、これまでにない規模のデータをスケーラブルに分析し、モデルのリスク管理のための透明性のある基盤を構築し、リアルタイムの知見を関連づけて迅速な対応を行うことで定義される堅牢なデータ戦略が必要です。モダンなデータドリブン戦略によって、FSI はコンプライアンスおよびリスクのモニタリング、規制レポーティング、不正検知、KYC(本人確認)、AML など、喫緊なリスク、コンプライアンスのユースケースに対応できるようになります。データに基づいたコンプライアンスを確立し、AI によってレベルアップすることで、将来を見据えたコンプライアンスチームを作り出すことができます。

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