ETL と ELT の比較
2 つのデータ処理アプローチを徹底分析
データ処理パイプラインに ETL モデルか ELT モデルかを選択するには、それぞれのモデルの仕組みをしっかりと理解することが必要です。
適切に導入すれば、どちらのアプローチもワークフローの効率化に役立ちますが、両者には重要な違いがあり、詳細な検討が必要です。
本記事では、これら 2 つのデータ処理アプローチの共通点と相違点を深く掘り下げ、ビジネスに最適なソリューションを選択できるようにします。
ETL と ELT の比較:概要
ELT と ETL の主な違いは、操作の順序にあります。ETL とは、抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)の頭文字をとった略語です。まず、ソースからデータを抽出し、次にステージングエリアで使用可能な形式に変換し、最後に使用可能なデータをストレージリポジトリに転送し、分析のためにアクセスできるようにするプロセスを意味します。
このモデルは、数十年にわたりデータ処理の標準となっていました。一方、ELT は、最新のデータストレージ機能を活用した新しい処理オプションです。
ELT とは、Extract(抽出)、Load(読み込み)、Transform(変換)の頭文字です。つまり、データは抽出されるとすぐに読み込まれ、最初に変換されることはありません。その後、必要に応じて、データリポジトリから直接、使用可能な形式に変換されます。
ELT は、構造化データと非構造化データの両方を保存できる最新のデータレイクアーキテクチャと相性が良いです。つまり、アナリストは、より多様なデータタイプを活用して知見に役立てることができ、より有用なデータ解釈につながる可能性があります。
それでもなお、ETL モデルにはまだ多くの利点があるため、ELT と ETL の処理アプローチに関する全ての共通点と相違点を時間をかけて理解する価値があります。
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ETL と ELT の共通点と相違点
このトピックに関する議論の多くは、ELT と ETL の違いに焦点が当てられがちですが、両者にはいくつかの共通する特徴があることを覚えておくことが重要です。
共通点を把握する
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データ管理:最も重要な共通点は、どちらのプロセスも最終的には「効果的なデータ管理」という同じゴールを目指しているということです。ELT と ETL は、どちらもデータを高品質で一貫性のある正確なものにするための体系的なアプ ローチを提供します。その主な目的は、組織が実用的なデータインサイトを得られるようにすることです。
また、構成プロセスの観点からは、変換を完了するコンテキストや順序が異なっていても、各モデルで実行されるデータ変換が類似していることが多いことも注目に値します。
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自動化:ELT と ETL の両方が提供できる利点は、企業がデータ統合作業を自動化できることです。自動スケジューリングも可能で、API やコマンドラインインターフェース(CLI)からパイプラインにアクセスできます。
ここでの大きな利点は、効率性と生産性が大幅に向上する可能性があることです。スタッフが反復的なデータ業務に大量の時間を費やす必要性が減り、他の業務に集中できるようになります。
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データガバナンス:現代のビジネスの世界では、信頼性の高いデータガバナンスが不可欠です。単に効率性の問題だけでなく、ブランドの評判や法令遵守など、より広い意味での検討も必要です。
ETL と ELT の基本的な違いは、データガバナンスへのアプローチが若干異なることを意味しますが、どちらのモデルも強力なポリシーをサポートする能力を十分に備えています。
これらの共通点は、驚くことではありません。これらは全て、効果的なデータ処理モデルを使用する主な理由を反映しています。しかし、ETL と ELT の違いとなると、事態は少し複雑になります。
相違点がデータ処理に与える影響
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可用性:ETL を検討する際に留意すべき重要なポイントの 1 つは、データをどのように利用するつもりなのかを事前に把握しておく必要があるということです。これは、最終的なリポジトリにロードする前に、データを変換する必要があるためです。「どのデータが必要で、どのデータが廃棄されるのか」、「アナリストはデータをどのように使用するのか」といった質問への答えによって、データ処理中のデータの扱い方やフォーマットが決まります。
これに対して ELT モデルでは、構造化データも非構造化データも、変換を決定することなく保存できます。
これは、データの可用性に非常に大きな影響を与えます。ELT プロセスの下流にいるアナリストは、保存されている未加工データにいつでもアクセスできます。ETL では不可能です。ETL は必然的により厳格なプロセスであり、最終的なストレージ領域まで通過する未加工データの量を制限します。
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柔軟性:実際、データの可用性の問題は、より一般的な柔軟性の側面の一部にすぎません。ETL が直線的なプロセスであることには多くの利点がありますが、ELT よりも柔軟性に欠けていることを意味します。データをどのように変換するか一度決定してしまうと、それを変更することはできません。少なくとも、システム全体の他の側面に大きな変更を加えない限りは、難しいといえます。
ELT では、いつでも新しい方法でデータを活用できます。元のデータはいつでも容易に見つけることができ、アナリストの使用目的に応じてさまざまな方法で変換できます。
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アクセシビリティ:状況によっては、データにあまり手を加える必要がない場合もあります。もし単に元のフォーマットの非構造化データ(例えば、ビデオファイル)をデプロイしたいだけであれば、ELT モデル内でそれにアクセスし、必要な操作を行うのは非常にシンプルです。
従来の ETL モデルでは、データの監視は通常、IT 部門の専門家の権限に属します。彼らが方針を決め、全てのサポートを担当します。
これは、一貫したデータ標準を維持するためには有益ですが、他の従業員にとってはデータへのアクセシビリティが低くなります。そのため、ワークフローの効率が悪くなることがあります。
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拡張性:ELT と ETL のもう 1 つの重要な違いは、拡張性の問題です。その性質上、ETL プロセスを高速にスケールアップすることは困難です。保存すると決めたデータを最終的な保存先に保存する前に、全ての未加工データを変換しなければならないからです。ETL のこの側面は、必然的にかなりのリソースを必要とします。
一方、ELT モデルははるかに適応しやすいです。全ての未加工データが抽出されるとすぐに中央のリポジトリにロードされるため、最初に何らかの処理をする必要がなく、基本的に必要なだけのデータを追加できます。
また、ELT システムはクラウドベースのプラットフォームで稼働することが多く、迅速かつ容易に拡張できる利点があります。
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スピード:ELT モデルは、ETL よりも常に最適で最新のソリューションであると思われがちです。しかし、データ処理にはもっと微妙な側面があります。その 1 つがスピードです。
基本的に、あなたには選択肢があります。ETL は、ストレージにロードする前に全てのデータを変換する必要があるため、初期段階で時間がかかります。しかし、いったんそれが完了すれば、アナリストがデータを必要とするやいなや、すぐに行動に移せるため、データの使用は非常に迅速かつシンプルです。
ELT では、データを抽出してリポジトリに移動するだけなので、ロード時間が非常に短いという利点があります。しかし、保存されたデータは ETL よりもはるかに厄介です。実際に使用しようとすると、要件に応じてデータを準備するのに時間がかかります。
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メンテナンス:メンテナンスに関しては、オンサイトサーバーを使用するか、クラウドベースのサーバーを使用するかが最も重要な要素です。自社でインフラを用意すれば、メンテナンスの負担が大きくなり、接続コストが高くなるのは明らかです。
従来の ETL ソリューションでは、それが唯一の選択肢であったため、オンサイトの物理インフラ上で実行されていました。多くは依然としてその方法で運用していますが、クラウドベースのソリューションの登場により、それに代わる可能性が出てきました。
これは、ETL モデル、ELT モデルのどちらを選んでも同じです。ETL の変換段階で使用されるセカンダリ処理サーバーが追加されることで、メンテナンス要件が複雑になることは事実ですが、それはインフラを自社で運用する場合にのみ当てはまります。クラウドベースのサービスをご利用の場合は、プロバイダーが対応します。
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ストレージ:データ処理の実装にクラウドを活用することが、多くの組織にとって魅力的であることは容易に理解できます。ストレージ目的で自社の物理サーバーを使用することは確かに可能ですが、ELT プロセスを使用したい場合にはあまり現実的ではありません。
主な理由は、結果的に必要となるストレージに予測不可能性が内在しているからです。ELT モデルは、最新のデータスタックと相性が良く、データレイクスタイルのアーキテクチャで最も効果的に機能します。
しかし、全ての未加工データを複数のフォーマットで保存するということは、その時々のストレージ要件を把握することが難しくなるということです。ETL の場合、最終リポジトリに保存される元データの選択されたサブセットに関す る明確な知識があるため、それほど多くのストレージを必要としません。
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コンプライアンス:今日のビジネスは、複雑なルールや規制の世界で運営されています。データセキュリティなどの分野でコンプライアンスを維持することは、非常に重要です。
この点において、ETL は ELT に比べてより扱いやすいといえるでしょう。保存する前に全てのデータを変換すれば、厳格なコンプライアンス基準を確保するのははるかに簡単です。
ELT ソリューションでは、機密情報を削除する機会を得る前にデータを保存しなければなりません。サーバーが国境を越えて配置されているクラウドサービスにデータを保存する場合は、特に注意が必要です。HIPAA や GDPR などの規制へのコンプライアンスに問題が生じる可能性があります。
ETL と ELT の使い分け方
では、ETL と ELT、どちらが良いのでしょうか。まだ疑問に思われているかもしれません。実際のところ、ELT が ETL よりも優れていると一概に言えるものではありませんし、その逆も同様です。適切な選択は、既存のインフラ、処理速度、コンプライアンス要件など、いくつかの要因によって異なります。
ELT と ETL の使い分けは、ビジネスの優先順位を理解することから始まります。考慮すべき要素は、次のとおりです。
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データの同期:複数のソースからのデータを統一された構造化フォーマットにまとめる必要がある場合、ETL は良い選択です。データが保存される前に確実に処理を行えるからです。
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レガシーのアップグレード:ETL は、レガシーシステムからデータを移行する必要があり、新しいシステムとの整合性を確認する必要がある場合にも、優れた選択肢となります。
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コンプライアンス:前述したように、ETL モデルは、データプライバシー法のコンプライアンスの標準化をより容易にします。そのため、ヘルスケアや金融などの特に機密性の高いデータを処理する分野でビジネスを展開している場合は、ETL を選択した方がよいかもしれません。
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データ量:一方、顧客との取引などの大量のデータを定期的に処理するような組織であれば、柔軟性の高い ELT が適しているでしょう。
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アクセスのスピード:同様に、ビジネスモデルがリアルタイムで生成・使用されるデータの処理に依存している場合、ELT が提供するデータへのアクセスに不必要な遅延がないことが決め手になる可能性があります。
この ETL と ELT の比較例のリストは、可能性をかなり簡略化したものですが、参考となる出発点としてお役立ていただけることを願っています。Databricks のプラットフォームでは、ELT または ETL のいずれかを実装できます。カスタムソリューションが必要な場合は、ハイブリッドオプションを実現することも可能です。
Databricks を使用した ETL ツールと ELT ツールの比較
ETL ソリューションを使用したい場合、Databricks の Delta Live Tables が、従来のデータウェアハウスアーキテクチャ上で実行される ETL システムよりも多くの利点を提供します。
低レイテンシのストリーミング ETL をサポートするように設計されており、自動化されたデータフローオーケストレーション、データ品質チェック、エラー処理、バージョン管理機能を提供します。スマートなデフォルトオプションが用意されており、Spark のスペシャリストが容易に設定することも可能です。
別の選択肢として、Databricks Workflows オーケストレーションツールがあります。Databricks データインテリジェンスプラットフォームと完全に統合されたマネージドサービスです。ETL や ELT パイプラインの構築にも同様に適した、柔軟性の高いソリューションです。
わずか数クリックでカスタムワークフローを定義できるとともに、アクティブなタスクに対する比類のない可観測性を提供するため、完全にコントロールできます。また、 問題になる前に対処が可能な即時の障害通知など、トップクラスの監視ツールも利用できます。
これらは全て、データエンジニアリングの概念を革新した Databricks のプラットフォームにより実現可能です。データレイクとデータウェアハウスの最良の要素を組み合わせたレイクハウスアーキテクチャに基づいて構築されており、データのサイロ化を永久に解消し、データを活用して顧客にふさわしい最高品質のサービスを提供するためのコスト効率の高い方法を提供します。